【声マガ・インタビュー】早見 沙織

インタビュー

PROFILE

アイムエンタープライズに所属する早見沙織はやみさおりさんは、東京都出身の5月29日生まれ。『鬼滅の刃』(胡蝶しのぶ役)、『SPY×FAMILY』(ヨル・フォージャー役)、『ONE PIECE』(ヤマト役)等に出演。2025年は、『雨と君と』に主人公の藤役、『ブスに花束を。』に主人公の田端花役、『魔術師クノンは見えている』に主人公のクノン役で出演。
最近、脱出ゲームにハマっているという早見さん。昨年よりバースデーイベントでもリアル脱出ゲームを開催。「幼稚園の頃からサスペンスドラマを見ることが大好きだったので、自分が探偵になったような気持ちでその空間を味わえるのが魅力」なのだと微笑みます。そんな早見さんに、声優をめざしたきっかけや日本ナレーション演技研究所(以下、日ナレ)で学んだこと、声優をめざす読者へのメッセージを語っていただきました。

小学6年生の春休み、母に背中を押され、自分で日ナレの事務局に電話

声優という仕事を意識したのはいつ頃ですか?

小学校中学年くらいの時でした。母がオードリー・ヘップバーンさんの映画が好きで、吹き替え版がよく家で流れていたんです。
最初は海外の役者さんが日本語を勉強されて演じられているのかと思っていたんですけれども、声優という吹き替えをするお仕事があると知って。その後、何気なく観ていたアニメにも、キャラクターに声を当てている声優という存在がいることを知って、面白い職業があるんだなと思ったのが最初でした。

声優をめざそうと思ったきっかけは?

アニメも映画も大好きだったので、観ているうちにどんどん声優に興味を持つようになって、小学校高学年の頃には自分もいつかこういうお仕事ができたらいいなと思うようになりました。

日ナレにはいつ、どのような経緯で入所したのですか?

小学6年生の3月に、雑誌に載っていた日ナレの広告を見たことがきっかけでした。
声優になるための学校があって、中学生でも通えるジュニア声優クラスがあることを知って、通ってみたい! って思ったんですけれども、私はすごく引っ込み思案な子どもだったので、親に言い出す勇気が持てなくて。でも、どうしても通いたい思いが消せなくて、ある日リビングの机の上に日ナレの広告が載っているページを開いて置いておいたんです。
親に気づいてほしいというさりげないアピールですね(笑)。そうしたら、私が声優に興味を持っていることを知っていた母が「行きたいの?」と聞いてくれて、思いを伝えたところ、認めてくれました。
ただ、「申し込みの電話は自分でしてね」と言われて、すごい緊張して手が震える中、自分で事務局に電話しました。母は私が表に出たがるタイプではないことをわかっていたので、本気でやりたいのなら、その一歩は自分で踏み出しなさいと背中を押してくれたのだと思います。

初のアフレコ収録、緊張しすぎて前々日に高熱でダウン

入所した当時の日ナレの印象はいかがでしたか?

中学1年生の4月から週1回、日曜日に通い始めたのですが、志が同じで世代も同じ、話の合うメンバーと、憧れの声優になるためのレッスンが受けられるということで、すごくワクワクしながら通っていました。
当時は声優のお仕事がどういうものかまだよくわかっていなかったこともあって、「ぜったい声優になってやるんだ!」という強い気持ちよりは、お稽古事感覚のゆるっとした気持ちで、ただただお芝居をすることが楽しくて、通っていたように思います。

ジュニア声優クラスで印象に残っていることはありますか?

ジュニア声優クラス2年目の終わりのオーディションの前に、講師の方が、「絶対大丈夫だから、あなたのそのままの魅力で頑張っていらっしゃい」というようなとても温かいメッセージをくださったんです。それがすごく嬉しかったことを覚えています。

事務所に所属したのはいつですか?

ジュニア声優クラス2年目の終わりのオーディションに合格し、アイムエンタープライズに所属しました。中学2年生の時でした。

初めてのお仕事はいかがでしたか?

中学3年生の時に出演したドラマCDでした。日ナレではまだアフレコを習っていませんでしたし、初のアフレコ収録ということで、前々日くらいから緊張のあまり人生で5本の指に入るくらいの高熱を出してうなされてしまいまして。
今振り返ると、よく回復して立ち向かえたなって思うんですけれども、共演したキャストの皆さんや音響監督さんが本当に温かくて、何もわからない状態の私に基本的なことから丁寧に教えてくださって、失敗しながら、間違えながら覚えていったという感じでした。

初のアフレコのお仕事で学んだのはどんなことでしたか?

一番覚えているのは、台本の持ち方やページのめくり方です。
マイクが高性能なので、台本を動かしたり、紙をめくる時に出る小さな音も拾ってしまい、その音がマイクに乗ってしまうと、セリフを録り直さなければいけなくなってしまうんです。そうならないためのコツを現場で教えていただきました。

日ナレと学校、仕事の三本柱だった中学・高校・大学時代

日ナレと学校、お仕事の三本柱の生活は大変ではありませんでしたか?

ジュニア声優クラスの後、高校1年生から基礎科、本科、研修科と進みましたが、事務所にお願いして、お仕事は学業優先で入れていただいていましたし、高校3年生の時は大学受験をするために、いったん日ナレはお休みさせていただいて、勉強に集中しました。
学業のフィールドでは友達と楽しくワイワイ、日ナレのフィールドでは志が同じ仲間と好きなことを追求し、仕事のフィールドは緊張しながら求められているスキルを発揮する場と、それぞれで意識がガラッと切り替えられたので、うまく続けられた気がします。

お仕事をしながらも日ナレでレッスンを受けることでプラスになったと思うのはどんなことですか?

いろいろありますけれど、一番は、声優はもちろん、俳優の方など、様々なジャンルでご活躍されている講師の方と出会えたことだと思います。
表現のプロである方から、たくさんの刺激を受けましたし、現場に活きるたくさんの栄養をいただいたなって思います。

声優とは、大変なことや頑張らなければいけないことがコンスタントに訪れる仕事

これまでの声優人生の中で、ターニングポイントになった作品や出来事はありますか?

どの作品も気づかされることがありましたから、ひとつに絞ることは難しいですね。
ただ、年代でいえば、大学を卒業する年は、これから社会人として声優一本になるという大きな変化の時だったので、意識的に変わらざるを得ませんでした。
実は、声優一本には決め切れずに、大学の友達と同じように就職を考えて、就活セミナーに参加したり、大学院を視野に入れたりもしていたんです。声優という仕事を、なりたかった職業ではあるものの、どこかで“特殊な道”みたいに感じていたのかもしれません。

それでも声優の道1本に決めたのは?

やはり表現することやお芝居をすることが好きだったからだと思います。
それまでのお仕事の中で、お芝居をしていて魂の奥底が震えるような瞬間を何度か経験することができていまして、その積み重ねが自分にとって本当にかけがえのない大事なものだと思えたので、声優の道1本で進むことに決めました。

早見さんが思う声優の魅力とは?

私がかけがえのない大事なものだと思う魂の奥底が震えるような瞬間について、ある監督さんから、「その振動は自分の外の世界にもつながっている」と言われたんです。私の震えと共振して、同じ空間にいる人やその作品に触れる人の心や魂も震わせていくと。
それって本当に奇跡だと思うので、そういう瞬間に出会えたときに、声優という仕事ができていることに喜びと感謝を感じます。

これまでたくさんの作品に出演され、順風満帆に仕事を重ねられている印象ですが、壁にぶつかった経験はあるのでしょうか?

それはもうたくさんあります。自分のここが全然ダメだとか、なんでもっとこうできなかったのかなとか、そういう思いになることばかりです。
しかも、キャリアを重ねるごとに、できることが増える分、難しいお仕事がまわってきて、不安なことや悩ましいことも増えていくんです。
ただ、声優というのは、大変なことや頑張らなければいけないことがずっとコンスタントに訪れるお仕事だと自覚しているので、お仕事をいただけることに感謝しつつ、常に自分ができることを精一杯やらなければと思っています。

今、ご自身が声優として大活躍できているのは、なぜだと思いますか?

私は子ども時代のふわっとした気持ちからスタートしていますけれど、日ナレの講師の方や監督さんなど、私の個性を見抜いて、良い部分を引き出してくれる方々との出会いをいただけたことが大きかったと思います。
自分が隠していたとしても、逆に自分がここだけを見てほしいと思っても、ベテランのプロの大人の方々は皆さん見抜いていらっしゃいますから。その方々からの言葉を柔軟に取り入れて、自分の引き出しに追加していくことが大切なのではないかなと思います。

何より大切にしているのは体調管理。そして日々、最上の自分を出せるよう意識

プロの声優となった今、日ナレで学んだことが役に立っていると感じることはありますか?

日ナレに通っていた頃は、正直、ストレッチって何に効くんだろうって思っていました。それよりも早くエチュードがやりたい、お芝居をしたい、マイク前に立ちたいという気持ちが強かったですからね。
でも、今、年を重ねれば重ねるほど、キャリアを積めば積むほど、基本的な体や声の使い方が声優にとって大事だということを痛感していて、日ナレでは本当に大切なことを教えていただいたんだなと身に沁みて感じています。
あと、さりげなく講師の方が褒めてくださったことが今の私の支えになっているなとも思います。例えば、エチュードで、朝、玄関から家を出るという課題を出された時、私は脳内で完全に自分の家の玄関をイメージして、靴を履きながら上の戸棚から鍵を出して、荷物を持って家を出るというお芝居をしたところ、「すごく玄関が見えた」と言っていただけたんです。
そういう褒められた嬉しい記憶が私の中には忘れたくない記憶としてインプットされていて、今、お芝居でわからなくなった時やつまづいた時、ふと何も考えずにやっていたその時の感覚を思い出させてくれて、私を助けてくれるんです。

今後はどんな声優をめざしていますか?

始めた頃よりは、近い将来のことを現実味をもって考えられるようになってきているとは思うんですけれども、とにかく、その時々で最善を生きていけたらと思っています。
本当に、レジェンドの声優の皆さんは、どういう日々を送られているんですか? ってインタビューしたいくらい、素晴らしすぎる方々が多いので、その方々みたいになれるように、とにかく一つひとつのお仕事において、常に最上の自分を出せるように頑張って、これからの声優人生を歩んでいきたいと思っています。

そのためには日々、どんなことを心がけていますか?

まず、声優になっていなかったら、こんなに体調に気遣って生きていなかったと思います。風邪をひく時はひくし、転ぶ時は転ぶし、生きていればいろいろありますが、なるべくその数を減らすように、体を整えることを重視しています。
毎晩ストレッチして、筋力もつけて、肺活量が減ったなと思ったら鍛えて、いっぱい寝て、しっかり食べて、それが一番のベースになっています。もちろん、いろいろな経験をしたり、いろいろな出会いをしたり、日々、喜怒哀楽を感じることも大切にしています。

最後に声優をめざしている方へメッセージをお願いします。

まず、私と同じように日ナレのジュニア声優クラスから始めたいと思っている人は、友達が作れるとか、週1回楽しいことができるという軽い気持ちでいいので飛び込んでみたらいいと思います。
そして、高校生以上の方は、たぶん、声優という仕事についていろいろ知識を得ているために、私がそうであったように、学業との両立とか、将来大丈夫なのかなとか、悩みも増えているかと思うのですが、そんな時は1回すべての雑念を取り払って、本当にやってみたいと思うんだったら、チャレンジしてほしいと思います。
困った時は、日ナレの事務局など相談できる大人の方々がいますので、一人で抱えこまなくても大丈夫です。いつかお仕事の現場で会えることを楽しみにしていますので、一緒に頑張りましょう!

プロフィール

早見はやみ 沙織さおり
所属事務所:アイムエンタープライズ
主な出演歴
SPY×FAMILY(ヨル・フォージャー)
鬼滅の刃(胡蝶しのぶ)
雨と君と(藤)
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