【声マガ・インタビュー】下野 紘

インタビュー

PROFILE

アイムエンタープライズ所属の下野紘しものひろさんは、東京都出身の4月21日生まれ。「進撃の巨人」(コニー・スプリンガー役)、『うたの☆プリンスさまっ♪』(来栖翔役)、『僕のヒーローアカデミア シリーズ』(荼毘役)等に出演。2025年は、夏公開予定の『劇場版 鬼滅の刃 無限城編』に我妻善逸役で出演。
最近は「時間を見つけてはジムに通っている」という下野さん。「声優の仕事は体力勝負みたいなところもありますからね。年齢を重ねれば重ねるほど、テクニックを使うのも体力や筋力が必要になるので、仕事に行く前や、仕事の合間にジムでトレーニングしています」。そんな下野さんに、声優をめざしたきっかけや日本ナレーション演技研究所(以下、日ナレ)で学んだこと、今後やってみたい仕事などを語っていただきました。

なんて楽しそうな仕事なんだろう……。中学生の時に声優になることを決意

声優という仕事を意識したのはいつ頃ですか?

アニメが大好きで、キャラクターを演じる声優という人がいることは小学校高学年の頃には知っていました。
その後、中学に入ってから、アニメやゲームに出演している声優さんにすごく興味を持つようになって、声優の方々が出演しているラジオ番組やラジオドラマ、ドラマCDなどをよく聴くうちに、声優という仕事に憧れを抱くようになりました。

声優をめざしたきっかけは?

中学3年生の時、進路を決めなければいけないタイミングのことでした。
将来に対して漠然とした不安を抱えている頃、声優さんたちのラジオ番組やドラマCDを聴きながら、「なんて楽しそうな仕事なんだろう」と感じたのがきっかけです。
ちょうどその頃、中学2年生の時にハマった『無責任艦長タイラー』というアニメをもう一度観て、どんな時も笑っているタイラーにすごく励まされ、「人に幸せを与えることができて、自分も楽しめる。声優はそんな仕事なんだ」と思ったことも声優をめざす大きな要因になりました。
それで、すぐに母親に「自分は声優になる! だから高校に行かない」と宣言したんですけど、「頼むから高校だけは出て」と言われまして。声優になる訓練ができるよう演劇部がある高校に進学し、高校卒業と同時に日ナレに通い始めました。

日ナレを選んだ理由を教えてください

声優になろうと決めてから養成所については自分でしっかり調べて検討していました。
日ナレを選んだのは、受講料が他の専門学校に比べて安かったことと、週1回のコースが用意されていたことでした。
僕は芝居の勉強のほかにも、アルバイトをしたり、プライベートな時間も大切にしたいと考えていたので、週1回なら時間が取りやすいなと思ったんです。

高校卒業後、日ナレに。入所当初は、寂しさと不安を抱えたことも

入所した頃はどのような生活を送っていましたか?

警備員のアルバイトをしながら週1回日ナレに通う生活を送っていました。
でも、家族や友達と生活のリズムが全く合わなくなってしまい、しかも、バイトは毎回メンバーが入れ替わる。僕は今でこそコミュ力が高くなりましたが、当時は初対面の人とバリバリ話せる人ではなかったので、日ナレでもなかなかクラスメイトと仲良くなれなくて。アルバイトもレッスンもない日は、「世界に自分一人しかいないんじゃないか」というくらい寂しさや不安を抱えたこともありました。

生活が楽しくなったのはいつからですか?

基礎科でレッスンを重ねるうちに毎日が楽しくなっていきました。感情開放のレッスンで少しずつ自分を開放していけるようになったこと、クラスメイトとセリフやシチュエーションを考えてエチュードをやったりすることで変わっていった気がします。クラスメイトはライバルでもありますが、皆、めざしている方向は同じ。共に切磋琢磨し合える仲間と出会えたことは本当に僕にとって大きな力になったと思います。

緊張しがちだった自分を変えてくれた講師の言葉

日ナレのレッスンで印象に残っている講師の言葉やエピソードはありますか?

僕はとにかく緊張しいで、人前で何かを発表するということが本当に苦手でした。
セリフ一行読むのにも苦労して、1ページ読むのに何度もかんでしまうくらい。そんな自分に対して、初期の頃は、声優に向いていないのではないかという不安や、ここでかんでしまうようではダメだという強迫観念をずっと抱えていました。
そんなある日、レッスンで、案の定何度もかんでしまい、怒られるだろうなと思っていたら講師の沢木郁也さんに、「お前は生きることに必死過ぎる。もっと気楽に人生をいろいろ楽しめよ」と言われたんです。
僕は完璧主義者で、たぶん自分をよく見せたいという思いも強かったんだと思います。その言葉をきっかけに、気持ちが楽になって、少しずつ肩の力を抜いて考えることができるようになっていき、人前に立つことも楽しくなっていきました。

講師の言葉によって、自分を変えることができたんですね。

僕と同じように人前で何かをすることが苦手という人がいたら、誰もが皆、変われるはずだと言いたいです。
というのも、日常、学校の友達や家族の前でふざけたり、おちゃらけたり、ダメな自分を散々さらけ出していますよね。それなのに、人前に立った時だけ急に完璧にやらなくてはって身構えてしまうのは矛盾しているし、そもそも楽しくないですよね。
今も緊張することはもちろんありますが、あの頃の経験を通して、どんなことでもいろいろ楽しもうという前向きな気持ちが大事だと常に考えるようになりました。

何クソという気持ちでがむしゃらに頑張った20代

事務所に所属したのはいつですか?

基礎科1年の終わりのオーディションでアイムエンタープライズに所属しました。
僕の中では日ナレに入所してプロになれるのは早くて3~4年後かなと考えていたので、嬉しい一方で驚きも大きくて。なんで僕みたいな人間が入れたのかと戸惑いが大きかったせいか、その後のオーディションでは自信のなさが出てしまい、所属後9カ月間はオーディションに落ちまくっていました。
後になってマネージャーから、「事務所に入ってきた時はどう扱っていいか分からなかった」と言われたくらいでした(笑)。

初めてのお仕事の思い出を教えてください。

所属2年目、日ナレの本科在籍中に出演した『リリーのアトリエ』というゲームが声優デビュー作でした。
アニメのデビュー作は翌年、研修科在籍中に出演した『ラーゼフォン』です。『ラーゼフォン』は初めてのアニメ出演であるだけでなく、初めて主役に抜擢された作品。共演するキャストの皆さんは大ベテランの方ばかりでしたから、ただただ緊張してしまって、挨拶もまともにできないくらいでした。
でも、そんな中でも楽しさはすごく感じました。実は、『リリーのアトリエ』以降もオーディションに落ち続けていたし、『ラーゼフォン』のオーディションに合格しなかったら声優を辞めようと思っていたんです。自分には才能がないからすっぱり諦めて別の職業に就いたほうがいいのではないかって。でも、『ラーゼフォン』に出演して、声優という仕事の楽しさを感じて、この道で頑張っていきたいと強く思うようになりました。

それ以降は順風満帆、お仕事が増えていったのですか?

いえ、それが、『ラーゼフォン』に出演した後、ちょこちょこと仕事をもらえるようになったと思ったら、また仕事がなくなってバイト生活に戻るという時期を経験しました。
そんな状況が変わったのは、2005年に放送がスタートしたアニメ『CLUSTER EDGE』の主人公を演じてからでした。徐々にレギュラーが増えていって、ようやく声優一本で暮らせるようになって。
ただ、当時の気持ちとしては良かったとかこれで安心というのとは真逆でした。現場には本当にすごい先輩たちがたくさんいて、その上にもさらに大ベテランの声優さんたちがいて、一方で下からは新人がガンガン出てくるわけですから、うかうかしている場合じゃないぞ、いつまでも自信がないとか言っている場合じゃないぞって、20代はとにかく何クソって気持ちでがむしゃらに頑張らなければいけないぞと強く思っていました。

『うたの☆プリンスさまっ♪』出演で声優としての意識に大きな変化が

これまでの声優人生の中でターニングポイントとなった作品や出来事はありますか?

声優としての意識が変わったという意味では、『うたの☆プリンスさまっ♪』が大きかったと思います。
それまでもファンレターに励まされたりしていましたから、ファンの皆さんへの感謝の気持ちは強く持っていましたが、ファンの皆さんを楽しませるためにはどうしたらいいかというところまでは自分の意識は至っていませんでした。
ところが初めて『うたプリ』のライブをやった時、ものすごい盛り上がりを見て意識が大きく変わったんです。自分としては一生懸命演じて、来栖翔というキャラクターを盛り上げなければと思ってステージに立っていたのですが、ファンの人たちは簡単にそんな僕の思いを超えてきて、何があっても僕の先に来栖翔を見ているし、来栖翔をガンガン応援してくれるし、さらには一生懸命来栖翔を見せようとしている下野のこともガンガン応援してくれる。ライブは大成功と評価されましたが、それって自分の力ではない、お客様の力だってその時強く感じて、今のままの自分じゃダメだ、ファンの人たちに楽しんでもらうためには自分がいろいろな形で成長していかなければと思いました。
そしてまた、観てくれる人、聴いてくれる人たちにどうやったら楽しんでもらえるだろうかと考えるようにもなりました。

そのために大切にしていることはどんなことですか?

今はナレーションやバラエティ的な仕事など、本当に幅広くやらせていただいていますが、どの仕事であれ本当にいいものを提供できるように、いつでも自分を磨いておかなければと思っています。
そのためには、体を鍛えたり、自分なりに勉強したり、知識を得たり、感情面を豊かにするためにいろいろな経験をしたりと基本的なことを大切にしています。
あとは、声優は一人でできる仕事ではありませんから、スタッフやファンのことを考えることも大事だと思っています。
この仕事は本当にもう考えることがいっぱいあって、時間が足りないくらいです。でも声優を続ける限りそういう生活はずっと続くし、自分の中では100点満点の仕事は絶対できないと思っているので、常に100点満点をめざす気持ちで前向きに努力していかなければと思っています。

努力すらも楽しんで、できる限り、この仕事を続けていきたい

今後やってみたいお仕事や目標はありますか?

コロナ禍に朗読劇をやって、非常に面白かったので、定期的にやっていきたいと考えています。また、大人向けの朗読劇だけでなく、子どもたちへの読み聞かせもできたらいいなとも思っています。
そのほかにもやりたいことはたくさんあります。キャリアを積んで昔よりできることが増えた分、もっとこうできるのではないかとか、もっとこんなこともしてみたいとか、どんどん貪欲になっていて、やりたいことが膨らんでいます。

下野さんが思う声優の魅力とは?

改めてこの歳になって思うのは、感情を開放して、演じながらそれを爆発させるのが自分は本当に好きなんだなということです。まわりが100点満点だと言ってくれても自分の中では良くて80点、常にそういう気持ちでもっと良い点数を出すために追求しています。
野沢雅子さんや銀河万丈さんとお話させてもらった時に感じたのですが、おふたりともとにかくこの仕事が大好きで、ずっと続けたくて、そのために努力もされているということ。でも、苦労しているとは全く感じていないんですね。たぶん、努力すら楽しんでいる。僕もそんなふうに、できる限りいつまでも続けていけたらと思っています。

最後に読者にメッセージをお願いします

いろいろなものを見て、知って、経験して、自分の中で想像力や感性を磨いていって、人の真似ではなく自分自身の魅力や個性、考えを持ってもらいたいと思います。
事務所に所属できればすぐにコンスタントに仕事が入るようになるほど甘い世界ではありませんし、声優1本で暮らしていけるようになるのはなかなか大変かもしれない。でも、本当にやりたいのならプライドを持って続けてほしいなって思います。

プロフィール

下野しもの ひろ
所属事務所:アイムエンタープライズ
主な出演歴
鬼滅の刃(我妻善逸)
僕のヒーローアカデミア(荼毘)
うたの☆プリンスさまっ♪ シリーズ(来栖翔)
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