【声マガ・インタビュー】鳥海 浩輔

インタビュー

PROFILE

アーツビジョン所属の鳥海浩輔とりうみこうすけさんは、神奈川県出身の5月16日生まれ。『刀剣乱舞シリーズ』(三日月宗近役)をはじめ、『NARUTO-ナルト-』(犬塚キバ役)、『戦隊大失格』(グリーンキーパー役)、『鬼滅の刃 刀鍛冶の里編』(玉壺役)、『弱虫ペダル』(今泉俊輔役)、『薄桜鬼』(斎藤一役)、『うたの☆プリンスさまっ♪シリーズ』(愛島セシル役)等、多数の作品に出演。
「インタビューでよく『今、ハマっているものは何か』と聞かれるんですけど、たいだい『ない』って言います。すみません、つまらない人間です」と艶やかな声で優しい笑みを浮かべながら語る鳥海さん。デビューから約30年、アニメに外画、ドラマCD、ゲーム、OVAにナレーションと多方面から引っ張りだこの鳥海さんに、声優をめざしたきっかけや日本ナレーション演技研究所(以下、日ナレ)で学んだこと、声優の醍醐味や第一線で活躍するために必要な要素などを語っていただきました。

時間的猶予がほしくて日ナレにフワッと入ってしまった⁉

声優という仕事を意識したのはいつ頃ですか?

高校時代、やりたいこともないし、大学に行けるほどでもないし、でも就職もしたくない。とりあえず時間的猶予がほしくて、専門学校に何年間か通っていれば既成事実ができるかなと思ったのが始まりでした。
家に置いてあった新聞広告かパンフレットか忘れてしまいましたが、その中に声優養成所を見つけたんです。とはいっても、それまで声優という仕事があることは知っていましたし、人並に映画もアニメも観ていましたけど、自分がキャラクターに声をあててみたいとか、演じてみたいとかは考えたこともありませんでした。
入所を決めた時も、声優になりたいとか、声優をめざすという考えや覚悟はまったくなく、何も定まっていない状態でフワッと入ってしまった感じでした。

では、声優をめざしたきっかけは?

日ナレに入所してどんどん演じることの楽しさを感じていったのがきっかけですね。基礎科に1年、本科に1年、研修科に3年通ったのですが、どんどん意識が高まっていくというか、だんだん現実として考えるようになったという感じでした。

日ナレに通って初めて演技の楽しさを知った

入所した頃はどのような生活を送っていましたか?

神奈川県の実家から東京まで、当時週1回3時間だったレッスンに通って、あとはバイトをしていました。
今は声優という職業がメディアで取り上げられたり、かなり一般的になっていると思いますが、僕が日ナレに通っていた30年以上前は、まだ声優は誰もが知っている存在ではありませんでしたし、今ほど情報もなかったので、声優の仕事っていったいどういうものがあるのかもよくわかっていない状態で、通い始めた当初は声優になれるという現実味がないまま、ただ、行けば楽しいという状態でした。

入所当初の日ナレの印象はいかがでしたか?

それまで演技をしたこともないし、どうしても声優になりたいと思っていたわけでもないので、知識がない分、どんなレッスンに対しても違和感や疑問を持つことなく、楽しく通っていました。
これはたぶん性格だと思うんですけど、なんでも受け入れちゃうんですよね。そのため、通っているうちに、演じることやみんなでひとつの作品を作るという作業が楽しくなっていきました。

演技未経験な中で入所し、人前で演技することが恥ずかしくはなかったですか?

ありがたいことになかったんですよ。今も変に緊張することってあまりないんですけど、昔からできなくて当たり前とまでは言わないですけども、自分が出せるものしか出せないんだからっていう考え方だったので。
もちろん一生懸命はやっているんですけど、見せることが恥ずかしいとか、うまくやらなきゃっていう変な緊張感は持たないでやれていましたね。

充実した気持ちでとにかくいい仕事がしたくて突っ走っていたデビュー当時

事務所に所属したのはいつですか?

今のような所属のための所内オーディションというのが当時はなくて、研修科の1年目の最後の頃にお仕事をいただけるようになったところがスタートでした。

初仕事はいかがでしたか?

最初の現場は、声の仕事ではなく、ガソリンスタンドの店員さん向けの研修用ビデオという顔出しの出演でした。その時点では声優が自分の明確な目標になっていたので、お仕事ができるようになったことがまず嬉しかったですね。

その後順調にお仕事が入るようになったのですか?

初仕事の何ヶ月か後に初めてOVAやゲーム、TVアニメといった仕事をいただけるようになりました。
ただ、当時の僕は30歳くらいまでに声優1本で食べられるようになればいいのかなという感覚だったので、焦る気持ちはありませんでした。今ほどアニメーションの数はもちろん、お仕事の数自体が多くなかったですしね。
そんな中でありがたいことに30歳よりもだいぶ前の段階で声優だけで生活できるようになったので、その意味では毎日夢中というか、とにかく頑張ってどんどんいいお仕事をやっていかなければと思いながら、でも、お仕事自体とても楽しいという感覚でした。

声優の仕事のどんなところに楽しさを感じていったのでしょう?

日ナレでレッスンを重ねていく中で、どんどん声優の楽しさを感じていましたけど、現場に出ると、嬉しい楽しいもあるけれど、同時に責任感みたいなものもどんどん芽生えてきたんです。
例えば最初はガヤとかモブから始まって、だんだんオーディションに受かって役がついてくるようになって、当然、怖さもあるし、うまくできなくて悔しいとかもあるんですけど、それも含めて気持ちが充実していくというか。いろいろなものを感じながら突っ走って、だからこそ充実していたというのが一番正しいのではないかと思います。想像していたよりも声優の仕事は幅が広くて、毎日が新鮮でしたしね。

悔しい思いなど苦労もたくさんされたのですか?

オーディションに落ちるとかうまくいかないことはいっぱいありましたよ。今だってそんなに頻繁にオーディションに受かるわけではありません。でも、この仕事はトライアンドエラーの繰り返し。失敗した時も変に気にし過ぎても仕方ないので、同じ失敗を繰り返さないとか、なにくそ! って思う気持ちが大事だと思います。
カッコよく言うと、後ろを振り返らない。ネガティブに考えてしまうとどうしてもそっちに引っ張られてしまうから、なるべく前を向いて、ポジティブに考えることが大事だと思っています。

日ナレ時代の経験や学びが今も仕事に活きている

日ナレで学んだことで今に活きていると思うことはありますか?

この仕事はトライアンドエラーの繰り返しっていうのは日ナレで学んだことでもありました。レッスンが楽しかったと言ったけど、毎回毎回、全部が楽しくて、うまくできていたわけではありません。でも講師の方に何かを言ってもらえるっていうのは見込みがあるってことですし、可能性があるってことなので、そこはネガティブに捉え過ぎずに、同じ失敗を繰り返さないという考え方でなるべく前向きに捉えて進んできました。
それがその後の仕事現場でも活きていたと思います。あとは過剰にならないぐらいの自信を持つことも大事ということも学びました。いい意味での自信を持って、堂々とやる。これは声優に限らず、他のことにも言えると思います。

日ナレの講師の方に言われて印象に残っている言葉はありますか?

「みんなうまいね」って言われたことです。その後、講師の方は「俺、そんなにつらつらセリフなんか出てこないよ」って言ったんです。
要は僕らに対して、「相手の話を聞かずに自分の言いたいようにしか言っていない。それってお芝居じゃない。そのままじゃダメだ」ということを伝えたかったのだと思います。僕がその言葉の意味を自分の頭で考えて理解できたのは少し後のことだったのですが、その時に、自分で気づくことの大切さも痛感しました。もしかしたらクラスメイトの中には講師の方の言葉の真の意味に気づけないままの人もいたかもしれない。自分だけで気持ちよく演じていては作品は成り立ちません。
自分で気づくとか、まわりを見て気づくとか、“気づけるかどうか”は現場に出た時、必要なことだと思います。プロになってそれを実感しているので、当時の講師の方の言葉は今でも覚えています。

プロの声優に一番大切なのは、どれだけ準備をして本番に臨めるか

プロの声優として一番大切なことは何だと思いますか?

スタジオは結果を出す場所なので、この人ダメだなと思われたら、次の仕事はなくなってしまいます。結果を出すためには、どれだけ家で準備をしてきたかが一番大事だと思います。
というのも、自分が考えた演技が必ずしも演出家の意図と同じとは限りませんからね。直しが入った時にその場ですぐに言われた通りに演技を変えられるか。それも含めて、家でどれだけ準備をやっていくかが大事だと思っています。

ベテランになっても努力は必要なんですね。

その通りです。ビジュアルも含めて、「これどうやって演じるんだ?」っていうようなビックリするような役をいただくこともありますからね(笑)。
それが声優ならではのやりがいでもあるんですけど、常に必要なのは、台本や原作を読み込んで、イメージを膨らませて、自分の中である程度正解を見つけておくこと。そして、現場に行ってすり合わせられるように、固め過ぎずに幅を持っておくこと。いただいたからには、求められる以上のものは出したいですから、事前の準備は非常に重要だと思っています。

鳥海さんの考える声優の醍醐味とは?

大変なこともたくさんありますけど、30年くらい続けてきて、今、自分はこの仕事を楽しいと思って、充実してやれている。そういう気持ちになれるってことは、好きな仕事なんだろうなって思います。
あとひとつ、初めて視聴者の方からお手紙をいただいた時、不思議な感覚を覚えたんです。ファンをいっぱい増やすぞ! みたいな気持ちで仕事をしていたわけではない中、自分が意図しないところで会ったことがない方からリアクションをいただいて。人の人生に少なからず影響を与えることができる仕事なんだと実感しましたし、たぶんそういう職業って限られているよなぁって思います。
その後、イベントなどで直接反応をいただいたり、長く応援してくださる方もいらっしゃったり、そういったことがやりがいのひとつにもなっています。その分、責任も重大だと思っていますけど、良い仕事ができるよう充実して人生過ごしていきたいって思えるし、健康である限り声優を続けたい。先輩方はみんなすごいなと思うので、そこに近づけるように、ちょっとでも長くやれたら嬉しいですね。

声優をめざすなら、広くアンテナを張って自分の内面を太らせてほしい

声優をめざす人たちがやっておいたほうがいいと思うことは?

個人的には本をいっぱい読んだほうがいいと思っています。声優は基本的に声だけでお芝居をしているので、聴いている人に声だけでイメージを湧かせることが必要です。
そのためには自分がまずイメージできていなければいけないわけですが、面白い本は映像が勝手に頭の中に浮かんでくるのでその訓練になります。さらに本を読むことは読解力を深めることにもつながります。読解力があるかないかは演技はもちろん、人が言っていることをどれだけ理解できるかにも関わってきます。
あと、今、声優は表現者の中でも一番いろいろな仕事をやらせていただける職業だと思うのですが、フリートークでは知識量や語彙力も大事になってきますから、本は読んでおいたほうがいいと思いますよ。

日常の時間をどう過ごすかも重要なんですね。

何に対してもアンテナを張っておいてほしいですね。例えば、電車に乗っている時に人の動きを見ているだけでもいいんです。電車が急に止まったとき、人はどういう動きをしたり、声を出すのか。声優は走ったり、ジャンプしたり、殴ったり、殴られたりを声だけで表現しなければなりません。
そのためには、その動きをした時にどういう声が出るのか、厳密には声が出なくても、じゃあ息がどう漏れるのか。それらは日常のいろいろなシーンで研究できますし、家で実際に自分で体を動かしてやってみることもできます。そしてそういったことを、視野を広げて取り組んでほしいです。
例えば、僕は女性の役は来ないですが、女性と見まごう役をやることもありますし、声優しかやっていないですが、様々な職業の人を演じることもあります。その意味では時代劇や落語だって役に立つことがあります。
日常生活の中で幅広くアンテナを張って吸収していれば、知識や情報が増えていって、表現者の糧として自分の中に蓄積されていきますから、声優になりたい人はそういう意識を持って自分に貯金しておくといいですよ。

最後に声優をめざしている読者にメッセージをお願いします。

日ナレに通う以外の時間、お勤めをされている方もいれば学生の方、僕がそうだったようにアルバイトをされている方もいらっしゃると思います。生活もあるから時間の作り方は難しいと思いますが、どれだけ空いている時間に自分に投資できるかが大切だと思います。
レッスン以外でも、知識、情報、経験を増やして、いい意味で自分を太らせて、声優として一番の幹の部分をしっかり育ててください。若いうちから早めに意識を持ってどんどんそういうことをやっていって、習慣にしてしまった人は、プロになってからも絶対強いと思いますよ。

プロフィール

鳥海とりうみ 浩輔こうすけ
所属事務所:アーツビジョン
主な出演歴
刀剣乱舞シリーズ(三日月宗近)
弱虫ペダル(今泉俊輔)
薄桜鬼(斎藤一)
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